
体調が全く安定せず抗生物質も効きが悪い状態なのでブログ更新は休止ですが、
紹介するのは早い者勝ちってことで「今月の写真集」だけはアップしておきますね。
今月の写真集はロレッタ・ラックス。
青幻舎
http://www.seigensha.com/
◆判型:A4変 ◆総頁:96頁 ◆上製 ◆定価:3,675円(本体3,500円+消費税)
ISBN4-86152-0290
子供のポートレート集でフォトショップによる背景処理をしたものです。
計算された絵画的で不思議な写真集です。この手の写真集はあまりにも異様で
自分には馴染まないものがほとんどですが、このLoretta Luxはちょっと違います。
誰もが子供の時に持っていた感情が標本として並べられているような鏡みたいな
写真集です。ポートレートは写っている人物の感情や存在感を感じますが、
この写真集の子供達を見ていると子供としての純真さだけを捉えているように
思えます。写真のほとんどは視線を外していますが、視線を外す理由は撮られている
子供自身の世界を壊さないようにしている結果だとも読み取れます。
カメラに目線を向けることにより子供と写真と撮る者、見るものの間に「関係」が
生じますが、その関係を断ち切って子供自身の世界を顕在化させている点が優れていると
思います。不思議で夢の中の棲んでいる子供を「見させる」写真集ともいえるでしょう。
いろいろと評価があり、この写真集自体がどういうものか答えを出すのが難しい分類の
作品だと思います。作者は旧東ドイツ生まれでベルリンの壁が崩壊した時は20歳です。
旧東ドイツは秘密警察による国民相互監視の世界でしたが、その抑制された中で子供時代を
過ごした作者の痛烈な批判も入っているのかなとも思いますが、それを非常に上手く芸術に
昇華させている点も見逃せません。写真集を見る者がどうにでも解釈できるけど答えが
なかなか出せないという面白い写真集です。
写真集に収められている写真はロレッタ・ラックスのホームページで全て見ることができます。
ホームページの写真よりも断然、写真集のほうがいいので興味のある方は今のうちに入手される
ことをおすすめします。
http://lorettalux.de/
作品の中で特に気に入った写真は次の作品です。
"Girl with crossed arms"
一番のお気に入りです。勇気と不安が交錯しています。
"The Rose Garden"
不思議の国のアリスって感じです。 大人への背伸びしている感じもいい。
"The Fish"
純粋さゆえの残虐性ともとれますが、自分を取り巻く世界を考えているようです。
"Boy in yellow Jumper"
写真集の最後の写真です。すこし世の中が見えてきて大人達のしていることに疑問を
持っているのでしょうか? 旧東ドイツの体制への批判とも解釈できる写真です。
"The Drummer"
この写真集の代表的な写真の一つですが、子供の世界が永遠に続いて欲しいかのように
止まっているところがいい。けっこう奥が深い写真だと思います。
この写真集で全身が写っている写真は全て「素足」です。
靴を履いた子供の写真はなく、フレームから外しています。
これはかなり重要な仕掛けだと思います。
また、一枚だけ変な写真があって、ひげの濃い青年の写真があります。
猟銃を持って猟犬を従えています。格好は軍服と軍靴です。
この一枚の存在が何を意味するのか作者に聞いてみたいものです。
