
巨匠 細江英公の「球体写真二元論」を入手して読んで(見て)みました。
二元論といいつつ難しい理論は一切なく文章も少ないですが、文章にするまでもなく写真が
全てを語っている本です。どの写真も圧倒されるばかりで自分の中ではもっともインパクトが
ある写真家です。
長文ですので、時間と興味のある方は「続きを読む」をご覧ください。
球体写真二元論
ISBN4-89625-076-1
定価 3000円 窓社
写真家はそれぞれ追求するものが違うので一概に比べることは出来ませんが、細江英公の写真は
まさに自分がやってみたい写真そのものを撮ってきている芸術家です。
初めて見た細江英公の写真は「鎌鼬(カマイタチ)」の作品17です。舞踏家の土方巽(故人)が
農家の子供達の前でジャンプしている写真です。作られた写真ではあるけども作られていない写真です。
被写体である土方巽の内面、つまり内なるものを体の外にオーラとして出している情景を捉えている
わけですが、そのオーラをストレートに銀塩に表している写真です。もちろんこの撮影は細江英公の
企画で作品として作られていますが「写真」という概念は消えています。記録でもなく表現でもない
という感じでしょうか。そこにあるのは「存在」だけです。
「存在」には過去からの流れ、未来への流れ伴いますが、完全にその流れは止まっています。
その写真に描かれているものは人間の身体存在ではなく、そこに写っている人間たちの個々の
感情だけが描かれている感じがします。
なぜ、細江英公の写真がすごいと思うのかというと、私自身、近年セミプロ劇団で役者として
舞台に立ったり、ブロードウェイで実際に舞台に立っている先生を中心にミュージカル制作の
一部始終を見て来ました。また、それらの舞台写真やビデオも撮ってきました。
演技をする、踊るとはどういう面白さや難しさ、深みがあるのかは実際に経験してみないと
分かりません。細江英公がハマるのも良くわかります。強いオーラをもった役者を舞台の外に
連れきて撮るというアイディアも凄いですが、単純に外に連れ出しただけでは、こんな写真は
撮れないでしょう。役者の心を動かすには細江英公自身の写真技術の高さとはもちろんのこと
演技や踊りに対する深い理解、演出家としての素質が備わっていなければ無理でしょう。
細かいことは本に書いていませんが、演出についての様子が自然に書かれています。
まさしくファインダーという枠の中で演出して舞台監督をしている写真家ではないでしょうか。
もの凄い集中力で3時間しかもたないと細江英公は言っていますが、ぶっつけ本番で3時間も
撮って完全燃焼しているようです。これは舞台をやるのと同じです。撮影が終わると真っ白に
なるということからも想像できます。役者が体と言葉で演じると同時に細江英公も掛け合いを
してます。「〜との契り」「写真は被写体と写真家との関係」という言葉も出て来ますが、
まさしく一緒に演じている写真家だと思います。そういうところに私は好感を持てます。
写真の趣味を復活させるべくGD DIGITALを使い出してから明日で、ちょうど1年。
なんとかギリギリ1年以内で方向性が見えて来ました。実は舞台が面白いということは
最初から分かっていたのですが、色々な写真へのアプローチを見るにつけ迷うことしばしば。
漠然としていたものが、かなり明確になってきたということで1年やってみた価値はありました。
